2018/12/10 22:15


This was Hardcore:Posion Idea
  Poison Ideaは、モーターヘッド的なロックンロール・ライフスタイルを打ち出しているハードコア・バンドです。酒とドラッグに代表される不健康で退廃的な。しかし不健康なロックンローラーというのは須らく瘦せているわけです。でぶも確かに不健康ではありますが、それでLive fast die Youngってありか(笑)と思いました。
ロックといえば酒、ドラッグに必ず付随するのが女性ですが、でぶでは女性は寄り付きません。
そんなことから、変なバンドがいるもんだな、とPoison Ideaに興味を持ったことが切っ掛けでしょうか。当時米国のハードコアをよく掲載していた音楽雑誌、ドールで頻繁に取り上げられていましたし。

Poison Ideaといえば、M.A.N.VS.M.A.Nのメンバー一同大ファンで、聴いてもらえばわかる通り多大な影響を受けています。が、個人的には最初の印象はあんまり良くはなかったのです。というのも、当時私は7 Seconds、Minor Threat、Gorilla Biscuitsを知ったばかりで、アメハーの青臭さに一番ときめいていたわけです。ま、それらのバンドと比べると真逆ですわな。おまけに、私ハードコアに入れあげる前はスミスやPIL、Gang Of Fourが大好きなパンク・ニューウェイヴ少年。ハードコア・パンクみたいな野蛮な音楽は絶対好きになれなかった。キング・オブ・パンク?だせえなー。今どきパンク、パンクってスター○ラブか。なんかUKハードコア・パンクとモーター・ヘッド(どちらもニューウェイヴ少年には鬼門以外の何者でもない音楽です)を足した感じでいまいちだなーなんてとんでもないことを思ってたわけです。

しばらくして、アメリカにおいてハードコアが終焉を迎えた90年代頭。ニューヨーク・ハードコアからの流れでCitizen’s Arrest(*1)やBorn Against(*2)に入れあげてた私は、こういうダミ声とか潰した声のボーカルもやりようによってはかっこいいと感じ、昔苦手だったあんなバンドやこんなバンドを再度聴き直していました。
しかし、やっぱりダメなんですね。
我がことを棚上げしてというか自分がそうだからわかるんですが、たいてい声を潰したりがなり上げるボーカルって、声量のなさ・音感のなさ・リズム感のなさを誤魔化すためにやってるわけですよ。あるいはモーターヘッドのレミーみたいなちょっとナルシスト入ってる感じか。
そんな中でしばしの熟成期間を経て手に取ったPoison IdeaのKing Of Punkですが、これがガツンと来た。歌手のジェリーAさんですが、とても上手いんですね。一般的なロックやヘヴィ・メタルのシンガーとしても通用するくらいに。私はあまり好きではないし、バックの音楽は全く違うのですが、Pantera(*3)のフィリップ・アンセルモにスタイルが似ていると思います。というか、彼がパクったんでしょうけど(実際PIのファンでカヴァまでやってるそうです*4)、ちゃんと歌えるシンガーのスクリームであり、グロウリングなんですね。ごまかしではない。
楽曲もよくよく聴いてみるとディスチャージ等のイギリスのハードコア・パンクに影響されつつも、フレーズひとつひとつのアイディアが尋常ではない。プロダクションのマズさ(特にベースの音)を補ってあまりある名作だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=QqJf1EOn6X0
https://www.youtube.com/watch?v=BQGn5ZZJ_TQ
https://www.youtube.com/watch?v=5N_FQw0jhc0&ebc
これは、個々のプレイヤーとしてのポテンシャルの高さもさることながら、やはりハードコアに深い愛情を持ち、突き詰めて聴き込んでいるからに他ならない。
アメリカ人って基本的に自国・地元のバンドにしか興味を持たない傾向がある中、自らのコレクションを自慢げにズラズラと並べ立て、レコード・コレクターは思い上がったアホだ!と自虐とも皮肉ともつかないタイトルをつけちゃう人たちですから。


後にアメリカン・ハードコアの金脈を掘り当てて行くうちに気づくんですけど、PIの拠点となるポートランドやシアトル等北西部のバンドって、イギリスやヨーロッパのハードコアの影響が強いんですね。
ちょっと挙げるだけでFartz、Final Warning,Septic death、Hatex9、False Liberty(*5)、Jesters of chaos、Subvert,Aspirin Feast,Christ On A crutch(*6)等。
PIがヨーロッパのハードコアを北西部で広めたのか、元々イギリスやヨーロッパのハードコアが好まれる土地柄だったのかはわかりませんが…。
まあ、そんなこんなでPIはもちろん、米国北西部のハードコアにも興味を持ってもらえたら幸いです。

*1.ストレイト・エッジのTrue Colorsを母体に結成されたハードコア・バンド。ヨーロッパのスピードコアやクラスティ・ハードコアをNYHC出身らしいヘヴィ感覚で捉え、数多のフォロワーを産んだ。ボーカリスト、ダリルの供述によると、近所に住んでいたスイス人からヨーロッパのハードコア・バンドのデモやレコードを聴かせてもらって興味を持ったとのこと。アメリカン・ハードコア終わりの始まり。

*2.NY/NJ HC、Life’s Bloodを母体に(前述True Colors~Citizen’s Arrestと練習スタジオをシェアしていたらしい)結成されたバンド。Black Flag~BLAST!の流れを汲む変則的なコード進行とConflictの流れを汲む叙情的な旋律、ダークでモノトーンな音作りを組み合わせ、数多のフォロワーを産んだ。アメリカン・ハードコア終わりの始まり。

*3.90年代にヘヴィメタ界で一世を風靡したテキサスのモダン・メタル・バンド。当初は典型的なパワー・メタル(Burrn!で点数が高そうな)・サウンドだったが、ヘンリー・ロリンズとロジャー・ミレット(AGNOSTIC FRONT)の大ファンだという、フィルコアことフィリップ・アンセルモの加入以降音楽性をチェンジ。ヘヴィメタ界で数多のフォロワーを産んだ。まあハードコア好きな人は別に聴かなくてもよいバンド。  

 *4 PIをカヴァしているバンドの一覧。(Wikipediaより引用)
By The Grace of God covered “Plastic Bomb” on their 1996 album For The Love Of Indie Rock.
Kill Your Idols covered “Made to Be Broken” on their 2007 album Funeral for a Feeling.
Machine Head covered “Alan’s On Fire” as a B-side on their 1994 single Old.
Negu Gorriak covered “Getting the Fear” (Ikaratzen) on their 1996 cover album Salam, Agur.
Pantera covered “The Badge” for the 1994 The Crow soundtrack.
Pulling Teeth covered “Alan’s On Fire” on their 2008 single Witches Sabbath III.
Toe To Toe covered “Give It Up” on their 1996 EP No Gods and “Just To Get Away” as a B-side on their 1999 single Slave.
Turbonegro covered “Just To Get Away” on a live version from 1995 on the second disc of their 2005 Small Feces box set.
Valse Triste covered “Think Twice” (Laske Henkesi) on their 1999 album Turha Ruokkia Ruumiita.
Wolfbrigade covered “Say Goodbye” on their 2003 album In Darkness You Feel No Regrets.
Pass Out Kings covered “Death Wish Kids ” on their 2001 album We Claim Victory.
The A-Team covered “Punish Me” on their 2004 album A Is For Asshole.
Ratos de Porão covered “Pure Hate” on their 1995 album Feijoada Acidente.
Armed and Hammered (Toronto) covered “Discontent” live and studio recording (unreleased). Performed live at one of their final shows in Kensignton Market.
Vestindien from Bergen, Norway covered “Just To Get Away” on many of their live shows.
Brezhnev from Amsterdam, Netherlands covered “Think Fast”, “Think Twice”, and “Give It Up” on their 1996 EP “Rocket To America” and on the P.I. tribute compilation album “Bigger Than God”.

意外や意外、オールドスクールやNYHCタイプのバンドが多いのが面白いですね。

*5.ストレイト・エッジのBrotherhoodの前身

*6 Foo Fighters,Sunny Day Real estateのメンバーが参加した超絶テクニカルなポリティカル・ハードコア・バンド。