2018/11/07 13:57

 以前、Live ageで、Minor Threatの回転数を落とせばAC/DCになる説の検証をやってましたけど、自分はそれちょっと違うと思ってて、やはり、結果説立証ならずでした。AC/DCの影響が強いのは、ボストンとかニューヨークの戦闘的でタフなハードコアだと思うんですね。
これなんか、回転数も落とすも何も500億%AC/DCでしょう。某氏がKilling timeには90年代以降のタフガイハードコアと違って、根っこにパンクがあると書いてましたけど、彼らの根っこにあるのはパンクスの天敵、ハードロックじゃないかと思います。



 で、今回取り上げる説は、Killing timeでもNYHCでもAC/DCでもハードロックでもなく、メロディック・ハードコア、メロコアの第一人者Bad Religionに関する説で、Bad Religionうるさいソフト・ロック説。
 ここで、ソフト・ロックって何じゃい?産業ロックとどう違うんや?という方に簡単に説明しましょう。
ソフト・ロックとは、60年代に局地的にブームになった、産業ロックであります。
ビートルズやビーチ・ボーイズあたりのハーモニーをふんだんに多用したロックにイージー・リスニングやボッサ・ノバを取り込んだ耳障りのいいロックで、本国米国ではサンシャイン・ポップと呼ばれています。
あくまで局地的ですから、産業化に失敗した産業ロック。で、何で産業化に失敗したかというと、妙にこまっしゃくれたオシャレ感があったわけです。古民家改装したこじゃれたカフェでかかってても全く違和感のないオシャレさです。
今でいうひっそり系ってやつですね。
 意外に思うかもしれませんが、コマーシャリズムにおいて、オシャレっていうのはあんまりいいもんでもないんですよ。だって、世の中の一般大衆殆どダサいでしょ。
B'Zがどれだけ売れてるか、考えてみてください。
とんがったアンダーグラウンド・ヒップホップよりも、スーパー玉出の特売チラシみたいなフライヤーのヤンキー・アウトロー系のヒップホップ(ふるまいテキーラあり)の方が断然お客さんが集まります。
同じ産業ロックでも、ハーパース・ビザールよりもボン・ジョビの方が何十倍、何百枚も売れます。
残念ながらこれは真理なんです。
 で、ポップ・ミュージックのコア、粋を尽くした理想系とされる音楽でありなが4ら、日陰街道を歩んできたバンドたち。
90年代に入ってソフトロックの定義の下、当時人気の渋谷系の元ネタとして界隈のミュージシャンたちに取り上げられ、そこそこに再評価の機運が盛り上がりましたが、十年一昔が二周半もした今では顧みられることも少くなりました。

ここらで、ソフトロックのメジャー、マイナーな名曲たちを個人的嗜好のみでピックアップしてみました。
どうぞ。

Eternity's children - My happiness day


Sagittarius - My world fell down



Mutual understanding - EVerybody loves my baby




The Cryan Shames - It could be we're in love




 本題に入ります。
自分が初めてBad Religionを聴いたのは90年代初頭あたりだったと思います。
大ヒット作、Against the grainに続くGeneratorが出た頃です。

先行シングルでリリースされたAtomic Gardenが、グランジ~オルタナティヴ的な肌触りもある、Bad Religionとしては比較的実験的な楽曲だったため、果たして次のアルバムはどうなのか、Bad Religionはどこへ向かうのか話題になっていたと記憶しています。
ってか、これ今聴き返すとPixiesですね。Pixies最高ですもんね。そりゃあBad Religionほどのベテランでも真似たくなってもおかしくないですよ。
とはいうものの、実験作はその一曲だけ。
結果としてGeneratorアルバムは、Against the grainには及ばないものの、その延長線上にあるいつものBad Religionで、いい意味で拍子抜けな反応が殆どでありました。
そんな話題の中で手にとって聴いてみたBad Religionですが、最初は正直なところ強烈な違和感を覚えました。
何なんだ、このジャーマンメタルみたいなメロディは。やってて恥ずかしくないんだろうか。
が、少し聴き続けていくうちに、いや、恥ずかしいのはこの人たちもわかってやってる。だからこんな朴訥なボーカルスタイルで素っ気無いアレンジなんだと。ヘビーメタルに感じる違和感は、ロックの文脈には不似合いなオペラのように歌い上げるボーカルスタイルと、ありとあらゆる楽曲アレンジをギターだけでやってしまう過剰感から来るものなんだと。
楽曲を引き算のアレンジで引き立てる、あ、これ今まで自分が聴いてきたパンク/ニューウェーヴと陸続きじゃないか。楽曲にとって理想なアレンジメントを突き詰める。ビーチ・ボーイズとかと同じ方法論じゃないか。これ、意外と嫌いじゃないかも。そう気付くまでさほど時間がかかりませんでした。 

ここらでBad Religionの数々の名曲とソフトロックの数々の名曲を聴き比べてもらいましょうか。


















Bad Religionって不思議とボッサやブラジル的なメロディ感覚があるんですよね。
これは雨後の竹の子のように発生したBad Religionのフォロワーの誰一人として真似られなかった部分です。そこもソフトロックっぽい。
もちろん、ソフトロック、サンシャインポップなどという、60年代当時はジャンルとして確立されていなかったような、ニッチな音楽的傾向がBad Religionに直接影響を与えたとは考えにくい。そういう意味では説検証ならずなんですが、1960年初頭生まれのグレッグ・グラフィンやブレット・ガーウィッツが生まれ育った音楽的バックグラウンドに、様々なソフトロック構成要素と共通するものがあった、これは間違いないでしょう。