2018/10/27 22:49

 ハーリー・フラナガンといえば、ご存知クロ・マグスのオリジナル・ベーシスト。
再三再四に渡るバンド分裂劇の結果、現在ボーカリストのジョン・ジョセフがクロ・マグスを名乗り、名作と名高いThe Age Of Quarrelアルバムのレパートリー中心にライヴ活動を展開している。一方でジョンはクロ・マグス・スタイルの新曲を展開するバンド、Bloodclot(ジョンは80年代初頭から様々なメンバー編成でBloodclot!名義で活動しているのだが、それぞれのBloodclot!の関連性は不明)名義でアルバムをリリースしているので、クロ・マグス名義での活動はビジネス的な色合いが強いと取られかねない状況ではある。
 さて、ジョン自身はどうも反日的志向の強い人物らしく、あまり彼の名を出すと石つぶてが飛んで来かねないので、彼の紹介はここまでにしておく。いや、反日とか親日とか気持ち悪い言葉はあまり使いたくないのだけれども、別にそうまでして彼の肩を持つ筋合いもないので。

 で、クロ・マグスをはじき出された状況にあるMr.クロ・マグス、ハーリィ・フラナガンであるが、現在法的にはハーリィ側に"Cro-mags"を名乗る権利がないようだ。そのせいか、最近発掘再発されたCro-magsの初期デモ音源もハーリィのソロ名義でのリリースとなっている(実際、彼が全パートを弾いたようなのだが)。
彼の言い分によると、彼こそがクロマグスであることを証明するためのリリースだそうだが、それは言われなくてもファンの誰もが承知していることではないか。ジョン率いるCro-mags、ハーリィ曰くFaux-Mags(偽マグス)を見に行くファンは、誰が真のクロ・マグスとかどうでもよくて、Age of Quarrel期のボーカルを擁した精度の高いカヴァー・バンドで往年の名曲が楽しめたらそれでいいというだけではないだろうか。

もっとも、クロ・マグスを名乗る権利を誰が持っているかだとか、ウェブスター・ホールでの事件がどうとか、シーンを敵に回しただとかどうでもいい話だし、ジョン率いるクロマグス名義のクロ・マグス・トリビュート・バンドも悪くはないけれども、やはりクロ・マグスといえばハーリィのバンドである。グレッグ・ギン抜きのブラック・フラッグがジョーク・バンドでしかないのと同じことだ。
 ハーリィもまた、The Age Of Quarrelでのレパートリィーを中心にソロでのライヴ活動を展開中なのだが、

Harley's war~ソロ名義で何枚ものレコードを発表し、現役ミュージシャンとしても気を吐いている。いずれの作品も素晴らしい出来だ。
 最近になって、フル・アルバム、"Cro-mags"に再度針を落としてみたのだが、これがまた、何ともクロ・マグスそのものであり、自分としては非常に発見の多い一枚である。例えは悪いがクロ・マグスに影響を受けた現代のハードコア風のジョンのBloodclotに比べて、ハーリィーのそれはクロ・マグスそのものである。誰もが求めるThe Age Of Quarrelアルバムを基本にしつつも、クロ・マグス前のパンク、ハードコア・パンクだった頃から、メタルに接近した後期のクロ・マグスまで、彼のキャリアの集大成といってよい。


 以前90年代ハードコア特集で書いたとおり、自分は90年代のいわゆるタフガイ・ハードコア・極悪系ハードコアにもうひとつ馴染めなかった。今でこそ、その辺りをルーツにするようなバンドとも対バンするようになり変な先入観は完全に解けたが、当時のそれらのバンドのレコードを今聴き返してもやはり自分が積極的に聴く音ではないなあというのが正直なところだ。
自分自身、80年代のNYHCが大好きだったので、90年代当時自分の好きなものが突然別世界に行ってしまったような印象を受けていた。しかし、改めてハーリィーのソロ作品を聴き込んでみると、90年代になって起きたあの突然の変化と、80年代のそれが一本の線で繋がるのだ。もし、クロ・マグス名義でAlpha OmegaやNear Death Experienceといったアルバムではなく、このアルバムのような作風のアルバムが発表されていたら、いわゆるタフガイ・ハードコア・極悪系ハードコアにもすんなり入り込めていたかもしれない。