2018/09/03 19:04



テキサス州のハードコア・バンドというと、Dicksだとか、Big Boysだとか一癖も二癖もあるみたいな紋切り型表現で語られがちなのですが、DRIやVerbal Abuseを輩出した土地柄だけに、わりとオーソドックスなアメリカン・ハードコアタイプのバンドも活動していました。
その中でもヒューストンのDoom's daymassacreというと、ポストDRIの最右翼だったといえるでしょう。

D.R.I

メタリックなエッジもほどほどに、ガツンと飛ばすキヤッチーな王道アメリカン・ハードコア。
DRIはもちろんのこと、Neon christOutpatients,Deep woundに通じるあのスピード感。
83年に、MydollsやCulturecydeといったパンク/ニューウェイヴ系のバンドやハードコアでもReally Redのような"一癖も二癖もある"バンドをリリースしていたC.I.A Recordsから"Wake Up Or Melt Down" 7"を発表していますが、それがデビュー作にしてラスト作。


ストリートの現実などという絵空ごとやファンタジーの入り込む余地なき、圧倒的な郊外の現実。これぞまさしくハードコアであり、サバーブ・ティーン・エイジ・ハードコアの傑作といっていいでしょう。
しかしながら、DRIやVerbal Abuse,MDCといった全国クラスのバンドには及ばず太く短くlive fast die youngに短い活動期間を駆け抜けます。
余談ですが、例に挙げた全国クラスのバンドは、いずれもサンフランシスコ、要するに大都市に移住しているのと、バンドのロゴマークやジャケットが非常に印象的なバンドであります。…この辺りのA級とB級の境目についてはまたいずれ。



解散後、ベースのJ.Rはニッキー・シッキやチーター・クローム、U.Y.U.Sのメンバーらとスーパー・グループHumungusに参加。
ドラムを担当していたサム・ブラントンは、後にスピードコアの名バンド、Stark raving madに合流。こちらではギターを弾き多才なところを見せます。
こちらのStark Raving Mad、Doomsday Massacreのキャッチーで速いという方向性を純化して行ったかのようなスピードコアで両バンドを聴き比べてみるのも面白いと思います。
我々は、80s初期のUSハードコア・バンドはみんなハードロックかメタル、あるいはイーモウ、グランジ・オルタナティヴ化していったように思いがちなのですが、それらに反するようにハードコアを純化させて行く流れもあったわけです。


前述の7""Wake Up Or Melt Down" はもちろん、現在ではそこそこの高値で取引されていますが、幸い2010年代に入って、"Stick A Fork In It!"というタイトルでこの7"製作時の未発表曲5曲を丸々B面に収録したLPとして再発されました。
ジャケは微妙なところですが、音源は極上ですので、是非手に入れて欲しい一枚です。
2012年には地元で再結成ライヴを敢行したようですが、これはおそらくその再発盤発売に合わせたものだったのでしょう。